物語のパターンは36通りしかない物語の種類とシェイクスピアの分類

物語のパターンは36通りしかない理由と背景

 

 

 

シェイクスピアの物語分類とその影響

物語のパターンが36通りしかないという説は、長年にわたり文学界で議論の的となってきました。この説の起源は、イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの作品に遡ります。シェイクスピアは生涯で37の戯曲を書いたとされていますが、そのうちの36作品が物語の基本パターンを網羅しているという考えが広まりました。

 

シェイクスピアの36分類は以下のようになっています：

1. 哀願・嘆願
2. 救助・救済
3. 復讐
4. 近親者同士の復讐
5. 追走と追跡
6. 苦難・災難
7. 残酷な不幸の渦に巻き込まれる
8. 反抗・謀反
9. 戦い
10. 誘拐

 

（以下、36まで続く）

 

この分類は、物語の核となる要素や主要なテーマを示しており、多くの文学作品や映画、テレビドラマなどがこれらのパターンのいずれかに当てはまると考えられています。

 

シェイクスピアの36分類に関する詳細な解説は以下のリンクで確認できます：
シェイクスピアの36分類の詳細解説

 

物語の構成要素とは何か

物語の構成要素を理解することは、36パターン説の背景を知る上で重要です。フランスの文学理論家ジャン・ミシェル・アダンは、物語の構成要素として6つの要素を挙げています：

1. 時間性
2. 因果関係
3. 統一性
4. 変化
5. 行為
6. 語り手の存在

 

特に重要なのは「因果関係」です。哲学者ジャン＝ポール・サルトルが定義したこの概念は、単なる出来事の羅列ではなく、ある出来事が次の出来事を引き起こすという関係性を指します。この因果関係こそが、物語を単なる事象の記述から、読者を引き込む魅力的なストーリーへと昇華させる鍵となります。

 

物語の構造分析に関する詳細な情報は以下のリンクで確認できます：
物語の構造分析に関する詳細情報

 

物語の類型化の歴史とアプローチ

物語のパターンを分類する試みは、シェイクスピアの時代以前から続けられてきました。20世紀に入ると、ロシアの民俗学者ウラジーミル・プロップが「魔法昔話の形態学」を発表し、昔話の構造を31の機能に分類しました。プロップの研究は、後の物語研究に大きな影響を与えました。

 

プロップの31機能は以下のようなものです：

1. 家族の一員が家を離れる
2. 主人公に禁止が課せられる
3. 禁止が破られる
4. 敵対者が情報を得ようとする
5. 敵対者が犠牲者に関する情報を得る

 

（以下、31まで続く）

 

プロップの研究は、物語の構造を科学的に分析する道を開きました。しかし、彼の分類はあくまでも魔法昔話に限定されたものであり、すべての物語に適用できるわけではありません。

 

プロップの31機能に関する詳細な解説は以下のリンクで確認できます：
プロップの31機能と現代の物語分析

 

現代における物語のパターンの解釈

現代の研究者たちは、シェイクスピアの36分類やプロップの31機能を基に、さらに物語のパターンを分析しています。2016年、バーモント大学のアンドリュー・リーガン率いる研究チームは、1,700以上のフィクション作品をテキストマイニングし、物語の展開パターンを6つに分類しました：

1. ひたすらハッピー
2. ひたすらアンハッピー
3. ハッピー→アンハッピー
4. アンハッピー→ハッピー
5. アンハッピー→ハッピー→アンハッピー
6. ハッピー→アンハッピー→ハッピー

 

この研究は、物語のパターンを感情の起伏という観点から分析したものであり、シェイクスピアの36分類とは異なるアプローチを取っています。しかし、両者とも物語の本質を捉えようとする試みであることに変わりはありません。

 

リーガンの研究に関する詳細な情報は以下のリンクで確認できます：
リーガンの6パターン分類に関する詳細情報

 

物語のパターンと人気の関連性

リーガンの研究チームは、各パターンの人気度も調査しました。その結果、最も人気があるのは「アンハッピー→ハッピー→アンハッピー」と「ハッピー→アンハッピー」のパターンであることが判明しました。これは、読者が単純な幸福な結末よりも、複雑で悲劇的な要素を含む物語を好む傾向があることを示しています。

 

この発見は、物語創作において重要な示唆を与えています。作家やシナリオライターは、これらのパターンを意識しつつ、独自の創造性を発揮することで、より多くの読者や観客の心を掴むことができるかもしれません。

 

しかし、物語のパターンが限られているからといって、創造性が制限されるわけではありません。むしろ、これらのパターンを基礎として、そこに独自の要素を加えることで、新しい物語が生み出されていくのです。

 

物語のジャンルや対象読者によっても、好まれるパターンは異なります。例えば、児童向けの物語では「アンハッピー→ハッピー」のパターンが多く見られますが、大人向けの文学作品では「ハッピー→アンハッピー」のパターンも多く採用されています。

 

物語のジャンルと対象読者に関する詳細な情報は以下のリンクで確認できます：
エンターテインメント作品のジャンル一覧

 

物語のパターンが36通りしかないという説は、物語の本質を理解する上で重要な視点を提供しています。しかし、これはあくまでも基本的な枠組みであり、その中でどのように独自性を発揮するかが、作家や創作者の腕の見せどころとなります。物語のパターンを知ることは、より豊かな創作活動への第一歩となるのです。